社長から急に大喜利 

ある日のバイト

いつも通り皿洗いをしているといきなり厨房に社長が訪れた。おそらく店長になんらかの用があったんだと思う。

小さな厨房なので社長と店長の会話がよく聞こえる。

今日の売れ行きがどうだとか、中国人はマナーがないだとか、新しいバイトの出来だとか。

できるだけ会話を振られないよう俺は聞いてないふりをして黙々と皿を洗った。

俺の頭の中の願いは1つ「社長よ、頼むから早く帰ってくれ」

社長がいる間はもちろんどんなミスも許されないのだ(皿洗いだけど)

そう願いながらただひたすらに皿を洗い続けた。

 

社長と店長の会話がひと段落着いたかなってところで、社長は俺ともう1人のバイトを見てこう言った。

 

「みんな黒い服着てんな〜 チーム名なによ!」

 

その刹那、厨房に沈黙が訪れた。

 

大喜利だ。

 

社長は僕たちバイトに大喜利をしかけたのだ。

それっぽく言えば

「定食屋の定員が全員黒い服を着ている、なんていうチーム名?」

僕の目に映る景色は、蛍光の黄色に包まれ、隣には一緒に大喜利に臨むバカリズムやホリケン、向かいには笑顔で採点をする川島や有吉。

そして薄っすらとプロジェクター越しに解説をする松本人志の姿が、、

俺は颯爽とフリップに回答を書いた。そして勢いよくピンポンを鳴らし、フリップを自信満々にひっくり返し大きな声で、、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみません。嘘です。

 

実際はなにも言えずただオロオロと辺りを見渡し、ニタァと気持ち悪く笑っただけ。

 

社長のお題は宙に浮いたままだれも処理することなく姿を消し、そこにあるのは沈黙と生臭い生ゴミの匂いだけだった。